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Everyday I Have The Blues

カッコーの巣の上で(加筆版)

たとえば「カッコーの巣の上で」をめぐる批評。

この映画の感想として “日本の精神病院の実態を論評するだけ”、の人がいました。
もしそれだけしか感じなかったんだとしたらヤバイです。情操教育やり直す必要あり?

それと、よく目にするのが「自由」の大連呼。
この映画を賞賛する人と批判する人。どちらもこぞって「自由、自由」とおっしゃる。
現代人の特質でしょうか。権利意識の強さがモロに出ている感強し。

先日深夜にNHKで放送していたドキュメンタリー。少年院に収監されている少年たちのミーティング見せてもらいました。
彼らの共通した特徴は、大した根拠もないのに肥大化してしまった権利意識。すさまじい自意識のかたまり。
世の中には“理屈じゃない”ことがあるって学習していないんでしょうね。
と言ったって大したことじゃありませんよ。親や教師や年上の人間は敬え。その程度のことです。人間の本質としては確かに誰もが平等なんでしょうけど(?)、立場を度外視した平等意識なんて単に無礼なだけ。敬えない親や教師を持ってしまった不幸なんて、何も彼らに限ったことじゃないですから。

こんな風に書くと、まるで私がこの映画の精神病院擁護派のようですが、断じてそんなことはありません。・・・・・一応自分の名誉のため。
ラストでチーフが誰もが不可能だと思っていたことをやってしまうでしょ。物音に起きた入院患者が歓喜の声を上げて狂喜する。
あれ観て私も体が震えましたからね。恥ずかしくもカタルシス感じてしまいました。

単にこの映画をめぐる批評を読ませていただいた結果、そこで目にした「自由、自由」の大連呼に首をひねってしまった、ということなんです。あえて言えば、それらの批評に通低している盲目的な自由志向に気味悪さを感じた。少年院の少年たちに持ってしまった感想と似てないこともない。
そりゃぁ束縛されるよりは自由がいいに決まってる。快適ですしね。でもこの映画に関してそれを論じることって、微妙に視点がズレているような。
この映画ってその程度のことを描いてます?
なんていうのかな、もっと根源的なもの。人間としての「尊厳」について考えさせられたんですけど、私の場合。
ジョン・フランケンハイマーの「フィクサー」やジュリアーノ・モンタルドの「死刑台のメロディ」と同じ種類の感動でしたね。


あ、俳優陣の演技は素晴らしいけど演出が・・・とかいう知ったかぶりの批評は論外ですよ。
誰でもその程度のこと言えますしね。それこそ「お前、作ってみいや。」です。
by junec1 | 2005-12-17 19:17 | 映画
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