一人の女の子が教室の壁に背もたれて立っていた。両手は制服のポケットに。
つかつかと彼女に近寄った私は、こう言った。
「★★さん、こうしたらどうする?」
私がやったことと言えば、
彼女の体をはさみこむように、(腕を伸ばした状態で)彼女の体(肩あたり)の両サイドの壁に両手をついただけだ。教室には他の生徒もいた。
私の腕をかいくぐれば、何の苦労もなくその状況から脱け出せる。
でも、彼女は信じられないくらいの照れ笑いを見せながら、身をよじるばかりだった。「やめてよ。」の一言もなかった。
私の方もそれ以上何もしていないし、何も言っていない。
気安く口を利いていただけの女の子。特別に仲が良かったわけでもない。
ガキの単なる悪ふざけ。たった十秒ちょっとの出来事。
ところが、たったこれだけのことで、彼女は私の誕生日に手編みのマフラーをくれた。正確に言うと、彼女は他のクラスの友達にそのマフラーを託した。私とその女友達は、放課後の本屋で「受け取って。」 「受け取れない。」の押し問答。
15回目の11月18日だった。
彼女に好意を持っていると勘違いさせたんだろうか。
なんとも思っていないからできた悪戯だったんだが。憧れの君には間違ってもできなかった行為なんだから。
ちーともわからんわ、女心。
誕生日おめでとう、junec1